母体血清マーカーテストとは?新型出生前診断との違いを解説
出生前診断には「母体血清マーカーテスト」や「新型出生前診断」などの種類があり、これらの違いがわからないという方も多いのではないでしょうか。この二つは妊婦さんの採血により行う検査という意味で共通していますが、その他の部分では大きな違いがあります。今回は、母体血清マーカーテストの特徴と新型出生前診断との違いを解説します。
母体血清マーカーテストとは
母体血清マーカーテストとは
「母体血清マーカーテスト」とは、1994年から日本で導入されるようになった出生前診断の検査の一つです。妊婦さんから採血した血液を3つの血清マーカーで検査するのがトリプルマーカー検査、4つの血清マーカーで検査するものがクアトロマーカー検査と呼ばれています。このうち現在主流となっているのが、より精度の高いクアトロマーカー検査です。
とはいえ、クアトロマーカー検査でも診断精度は約83%で、5%程度の偽陽性率があります。母体血清マーカー検査だけでは確定的な結果を求めることはできないことを理解しておきましょう。
母体血清マーカーの実施時期
母体血清マーカーテストを受ける時期は妊娠15~17週頃までとされています。これは、母体血清マーカーテストで異常を認めた場合に確定検査である羊水検査を行うことがあり、羊水検査の結果が出るまでには数週間かかるためです。検査結果がわかるまでの期間は医療機関によって異なりますが、約2週間程度となります。
母体血清マーカーテストでわかること
母体血清マーカーテスト(クアトロテスト)では、妊婦さんの血液の中に含まれる4種類の成分(AFP、非抱合型E3、hCG、インヒビンA)を測定して、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、開放性神経管欠損症(二分脊椎症、無脳症)の有無を調べます。それにより、お腹の赤ちゃんに先天性の染色体異常があるかどうか、神経管に異常かあるかどうかの確率がわかるようです。
母体血清マーカーテストと新型出生前診断との違い
母体血清マーカーテストと新型出生前診断の違いは、大きく分けて6つあります。
精度の違い
母体血清マーカーテストの中でも比較的精度の高いクアトロマーカーテストでも、診断精度は約83%に留まります。結果も確率で出されるため、陽性という結果でも必ずしも疾患があるという結論には至りません。それと比較して新型出生前診断の精度は99%以上であり、検査結果に関して非常に信頼度が高いといえます。
対象疾患の違い
母体血清マーカーテストの検査対象疾患は、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、開放性神経管欠損症(二分脊椎症、無脳症)のみであるのに対し、一般的な新型出生前診断では、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー(パト―症候群)となっています。
検査時期の違い
母体血清マーカーテストの検査期間は妊娠15~17週頃までとされていて、15週以前は検査を受けることができません。新型出生前診断は妊娠10週から検査が可能で、より早く染色体異常の有無を確認することができます。
母体の年齢の影響の有無
母体血清マーカーテストでは、確率の算出の際の基準に母体年齢が含まれており、妊婦さんの年齢が上がれば上がるほど各疾患の罹患率は上昇します。そのリスクに採血の結果が加味されて確率が算出されるため、母体年齢によって確率が変動し、より精度が下がっているといえるでしょう。とくに35歳以上の妊婦さんでは、検査を受けた際に陽性になりやすいので注意が必要です。新型出生前診断では、採血中の胎児の染色体を検査するため、陽性陰性の検査結果に年齢が影響することはありません。
双胎妊娠の場合の結果の違い
双胎妊娠で母体血清マーカーテストを受ける場合、21トリソミーは推定確率として結果が算出され、精度は単胎妊娠よりもさらに下がります。また、18トリソミーは検査結果が出ません。新型出生前診断では、どの染色体異常も検査ができます。ただし、陽性であった場合は「双子のうちのどちらか、もしくは2人ともが陽性」という検査結果になります。
検査費用の違い
母体血清マーカーテストの費用は2~3万円なのに対し、新型出生前診断の費用は約20万と、比較的高額です。しかし、検査精度が非常に高く陰性的中率がほぼ100%であること、確定診断のための羊水検査は15~20万ほどの費用がかかることから、本当に疾患の有無を知りたい場合は一概に新型出生前診断の費用が高いとはいえません。精度がほぼ確定診断と同程度で、妊婦さんにも赤ちゃんにもリスクがない新型出生前診断を受けるのがメリットは大きいといえるでしょう。
今回は、母体血清マーカーテストの特徴と、新型出生前診断との違いについて解説しました。母体血清マーカーテストと新型出生前診断との違いは多くありますが、とくに着目したいのが精度面です。新型出生前診断は精度が99%以上で、確定検査と比べても遜色がなく、検査結果は非常に信頼度が高いといえます。同じ採血による検査ではありますが、違いについてしっかりと理解をして、どの検査を受けるべきか検討していきましょう。